2024年4月からの「医師の働き方改革」により、3割の医師が年収減を懸念しています。64%は変わらないと予測し、年収を維持または増加させたい医師は8割以上です。医師たちは効率よく稼げるアルバイトや副業を多く実施しており、改革によるアルバイト時間制限を前に積極的に準備しています。副業時の勤務規定や時間外労働上限、確定申告の注意点も重要です。
この記事では現役の勤務医への調査結果をご紹介しながら、多くの医師がアルバイト・副業をする理由や代表的な副業例、そしてアルバイトや副業を始める前に知っておきたい注意点を解説します。
目次
医師の、将来の年収に関する「見通し」と「考え方」は?
3人に1人の医師が、医師の働き方改革による「年収減」を懸念
最初に、2024年4月から始まる「医師の働き方改革」による自身の年収への影響について、医師がどのような予測を立てているか尋ねました。
Q:2024年4月から始まる「医師の働き方改革」以降、ご自身の年収にはどのような影響があると思いますか?
こちらも「変わらないと思う」(64.4%)が最多となる一方で、「年収が下がると思う」(30.1%)と「医師の働き方改革」による年収減を懸念する声が約3割に上りました。
「医師の働き方改革」制度の対象とならない開業医や産業医、もともと時間外勤務や常勤先以外での副業をしていない医師は、大きな年収の変化がないと考えている方が大半でした。
◆変わらないと思う
・開業医なので関係なし。(50代/循環器内科/開業医)
・医療機関以外の医師業務なので、影響はない。(60代/一般内科/産業医)
・副業や時間外がないので、影響なし。(50代/健診・ドック/勤務医(健診施設や老健など))
一方で、現在も時間外労働を頻回に行っている医師や、常勤先以外の医療機関で外勤・アルバイトをしている医師の場合は、「医師の時間外労働の上限規制」によって労働時間が制限される分、収入が減ってしまう可能性が高いと考えているようです。
◆年収が下がると思う
・時間外労働は減らせない状況であることは病院も知っているのですぐに影響はないが、徐々に厳しく取り締まられると思う。(30代/小児科/勤務医(大学病院以外の病院))
・時間外労働はしなければならないが、給与としての申請は認められず自己研鑽とされる。
一方で家族への病状説明などを時間外に希望されたり、家族へ連絡をとるために時間外まで院内にいたりする必要がある。拘束時間だけは増えていくため、実質賃金はかなり低下する。(30代/総合診療科/勤務医(大学病院以外の病院))
・外勤の制限が発生すると思われるので、働けなくなった分、年収は下がる。(40代/内分泌科/勤務医(大学病院以外の病院))
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44.8%の医師は、将来「今よりも年収を上げていきたい」と回答
続いて、常勤先を持ち勤務医として働く医師を対象に、今後の収入に対する考え方を聞きました。
Q:今後の収入に対するご自身の考え方について、最も近いものを1つ教えてください。
最多となったのは「今よりも収入を上げていきたい」(44.8%)で、次いで「安定的な収入を得たい」(38.3%)、「収入よりも、仕事とプライベートの両立を優先したい」(16.9%)の順に多くなっています。
今後は「医師の働き方改革」の影響によって年収が下がる可能性があるなか、年収アップや安定的な年収の維持を望む医師が8割以上を占めていることが分かります。
◆今よりも収入を上げていきたい
・子どもの教育資金がかかるため。生活維持に加え、貯蓄は多いにこしたことはない。(40代/泌尿器科/勤務医(大学病院以外の病院))
・老後、楽をするため。(30代/放射線科/勤務医(大学病院))
◆安定的な収入を得たい
・定年後も、バイトで現在の収入を補う。(60代/消化器外科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆収入よりも、仕事とプライベートの両立を優先したい
・効率よく働いて、しっかり休みをとりたいと思う。(30代/消化器外科/勤務医(大学病院以外の病院))
医師が年収をアップ・維持する上で、「アルバイト・副業」は必要不可欠
それでは、医師が年収アップや安定的な年収の維持を実現するために行っていること・これから行いたいと考えているのは、どのような取り組みなのでしょうか。
常勤先のある勤務医・402名に尋ねた結果は、以下の通りです。
Q:ご自身の年収を維持したり改善したりするために既に実施していること・今後取り組みたいことはありますか?(複数選択可)
最も多いのは、「効率よく稼げるアルバイトを探す」(回答数:174)でした。
また、それに次ぐ「今のうちにたくさんアルバイトをしておく」(回答数:132)、「医業以外の副業で収入を増やす」(回答数:82)と、アルバイト・副業関連の取り組みが上位を占める結果となっています。
2024年4月からの「医師の働き方改革」が始まると、アルバイト先の医療機関における労働時間も含む医師の総労働時間が現状よりも厳格に管理されることになります。
つまり医師がアルバイトできる時間が限定され、これまでのように自由にアルバイトすることができなくなるのです。
このような背景から、「医師の働き方改革」に備えて積極的にアルバイトや副業に取り組む医師が多くなっていると推察されます。
【3選】医師の資格・スキルを活かせるアルバイト・副業
ここからは医師の資格やスキルを活かして働く、代表的なアルバイト・副業をご紹介します。
非常勤医師としてアルバイトする
医師が副業として選択するケースが最も多いのは、常勤先以外の医療機関で非常勤医師として働くアルバイトです。
仕事内容は外来診療や当直業務などの一般的な診療業務であることが多く、これまでの経験や知見を活かして取り組みやすいアルバイトといえるでしょう。
給与の相場は日勤の場合 時給10,000円程度ですが、中には1回あたり10万円を超えるような高額求人もあります。
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またコロナ禍以降は、オンライン診療のアルバイト求人がますます増えています。
専門や年齢不問であることや、土日や夜間・シフト制等柔軟性の高い働き方ができることから、医師から高い人気があるアルバイトです。
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医療・健康に関する記事の執筆や監修
健康や医療に関するwebサイト等に掲載する記事の執筆・監修も、医師資格を生かせる副業のひとつです。
仕事内容は医師が執筆をする案件の他、ライターが執筆した記事の内容について医学的に問題がないかの監修をメインで行う案件もあります。
時間や場所を問わず、在宅でできる副業となるため、プライベートの時間を重視したい医師や自由度高く働ける仕事を希望する医師におすすめの副業です。
医療系セミナーの講師
健康や医療に関するセミナーで、講師として話をする副業もあります。
製薬会社や一般企業からの依頼による講習は報酬が高額であったり、自身の知名度アップにも繋がったりというメリットがあります。
ただしセミナー講師として活躍するためには、人を惹きつける話し方を身に付けたり、ある程度の講演実績を積むことが求められます。
そのため、軌道に乗るまでにはある程度の時間がかかってしまう可能性を考慮しておく必要があるでしょう。
【3選】医師の資格にこだわらず収入を増やせる副業
医師の中には、医業以外の副業で収入を得ている方も多くいます。
近年のように感染症拡大で外来が閉鎖になってしまった場合には、アルバイト先からの収入が減ってしまう可能性があります。
一方の医業以外の副業では、上述のような場合にも影響を受けず収入源を確保できるというメリットがあります。
不動産投資
本調査でも医業以外の副業として特に多くの声が寄せられたのが、アパートや一軒家等の不動産物件を購入し、入居者から家賃収入を得る不動産投資です。
毎月まとまった家賃収入を得ることができ、不労所得を形成できる点が大きなメリットです。また相続税対策や、税制優遇効果も期待できるでしょう。
一方で需要の高い物件の見極めが難しかったり、失敗した場合は多額の負債を抱えることとなってしまったりというデメリットもあります。
株式投資
NISAやつみたてNISA、iDeCoといった少額・非課税から始められる制度が充実している株式投資も、医師の副業として始めやすいものの一つでしょう。
企業が発行する個別銘柄に投資すると配当金や優待品などを受け取れたり、購入時よりも売却時の方が値上がりしていれば売買差益が得られたりするメリットがあります。
ただし、場合によっては利益を得るどころか元本を失ってしまう可能性があるということにも留意が必要です。
施設経営
駐車場やコインランドリー等を経営し、収入を得るという副業もあります。
管理委託やフランチャイズを活用する場合には、経営・運営の手間を削減しながらまとまった収入を得ることができるかもしれません。
一方で様々な機材を準備する、集客力があり利益が見込める立地を確保する等で、開業に向けた初期費用は高額となる可能性もあります。
医師がアルバイト・副業をする際に気を付けたい3つの注意点
最後に、医師がアルバイトや副業を検討する際に注意すべきポイントを3つご紹介します。
注意点①副業が禁止されていないか
医師が希望していても、アルバイトや副業を禁止している医療機関もあります。
無用なトラブルを避けるためにも、始める前に勤務先へ確認してみましょう。
特に公務員扱いとなる医師は、国家公務員法や地方公務員法により職務に専念する義務が定められています。
公務員扱いとなるのは、国立や県立・市立病院といった公的病院に勤務する医師(※)、刑務所や拘置所といった矯正施設に勤務する医師、医科自衛官、厚労省の医系技官などです。
(※)独立行政法人である公的病院に勤務する医師は、公務員法の適用を受けない。
アルバイト・副業をする際には許可が必要であったり、勤務先が公的機関などに限られたりするケースもあるため、勤務先の職務規定で確認しましょう。
また初期研修医も、アルバイトすることは禁止となっています。
これは、医師法により「臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない」と定められているためです。
上記に当てはまらない場合にも、それぞれの医療機関ごとに規定があるケースもありますので、必ず職務規定を確認してからアルバイト・副業を始めるようにしましょう。
注意点②「時間外労働時間の上限」を超えないか
2024年4月から始まる「医師の働き方改革」では、医師の時間外労働について上限が定められます。
常勤先となる医療機関によって医師の時間外勤務の上限が異なりますが、その上限を超えてアルバイト・副業をすることはできません。
ただしアルバイト先が「宿日直許可」を得ている場合には、アルバイトにおける勤務時間は規制の適用外となります。
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よって、当直や日当直のアルバイトを検討する際には、募集元の医療機関が「宿日直許可」を得ているかどうか確認する必要があります。
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注意点③確定申告を行うが必要ないか
アルバイトや副業で得た所得(収入から経費を差し引いた金額)が20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。
例えば、非常勤として他の病院で報酬を得た場合は「給与所得」、記事執筆で得た所得は「雑所得」として申告します。
確定申告が必要となるのは、以下に該当する場合です。
・2カ所以上の医療機関から給与を受け取っていて、副の給与収入金額と他の所得金額(給与所得、退職所得以外)の合計額が20万円を超える
・年間の給与収入金額が2000万円を超える
・1カ所の医療機関から給与を受け取っていて、他の所得金額(給与所得、退職所得以外)の合計額が20万円を超える
・医療費控除や寄付金控除を受ける
・住宅ローン控除を初めて受ける
・ふるさと納税の納付先自治体が6カ所以上(ワンストップサービスの適用を受けていない)
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以上、医師がアルバイト・副業をする理由や代表的な副業例、そしてアルバイトや副業を始める前に知っておきたい注意点をご紹介しました。
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調査日:2023年11月7日~11月14日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
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