2024年夏の医師のボーナス事情では、ボーナスが昨年より増えた医師は19.4%に留まり、多くは「変わらない」(54.2%)か「減った」(11.8%)と回答しました。支給額は「50万円~100万円未満」が最多で、ボーナスがない医師は約7割に達します。年俸制のため、そもそもボーナスが支給されないケースが多く、特にフリーランスや一部の病院勤務医は支給が少ない状況です。
今回は「Dr.アルなび」が会員医師に実施したアンケート結果をもとに、2024年夏における医師のボーナス事情をご紹介します。
(※)参照:一般社団法人日本経済団体連合会「2024年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(加重平均)」
目次
【2024年夏】医師のボーナス(賞与)事情
ボーナスが昨年より増えた医師は19.4%にとどまる
昨年のボーナス支給額と比べた増減については、「変わらない」が54.2%と最も高く、「増えた」が19.4%、「減った」が11.8%と続きました。
Q:昨年と比べて、支給額は増えましたか?
昨年と比べた増減額は、「10万円未満」が最多
さらに「増えた」または「減った」と回答した医師を対象に、具体的な増減額を尋ねた結果は以下の通りです。
Q:具体的に、昨年とどのくらいの差がありますか?
いずれの場合も「10万円未満」の増減であるケースが多いことがわかります。
一方で10万円以上の変化があった医師の割合は、「増えた」で39.3%であるのに対して「減った」では58.8%と約1.5倍多くなっています。
▼医師からのコメント
・勤続年数が長くなった分程度は増えた。(50代/耳鼻いんこう科/勤務医(国公立病院))
・支給前は上がるという話だったが、蓋を開けてみたらむしろ下がっていた。(30代/呼吸器内科/勤務医(民間病院))
・経営不振で、支給額が下げられた。(70代以上/腎臓内科/勤務医(民間病院))
支給額は「50万円~100万円未満」が最多
一般的に医師は基本給が高く設定されている一方で、ボーナスは基本給ほど高い水準ではないという特徴があります。
今回の調査でも「50万円~100万円未満」(45.1%)が最も多く、次いで「100万円~150万円未満」(20.5%)、「50万円未満」(19.7%)が続き、「200万円以上」(1.6%)と回答した医師はごくわずかでした。
Q:支給額はどのくらいでしたか?
※「まだ支給額がわからない」を除く回答
3人に2人の医師は、ボーナスがない
そもそも、医師は年単位で給与総額を決める「年俸制」で雇用契約を結んでいることが多いため、ボーナスがないケースも珍しくありません。
中には年俸制であっても業績次第でボーナスが支給される医療機関もありますが、数としてはあまり多くないといえるでしょう。
また、常勤先となる医療機関を持たずに働くフリーランスの医師も、基本的にボーナスはありません。
今回のアンケートでもボーナス支給があると回答した医師は全体の32.6%であり、およそ3分の1にとどまっていることがわかります(「すでに支給された」「これから支給される予定」を合計)。
一方で「常勤先にボーナスの制度がないため、支給されない」(48.1%)と回答した医師は約半数にのぼり、「常勤先がないため、支給されない」(19.3%)と回答した医師と合わせてボーナスがない医師が全体の7割弱を占める結果となっています。
Q:今年の夏のボーナス支給状況を教えてください。
▼医師からのコメント
・年俸制のためボーナスはありません。なんとなく損した気分ですね。(60代/循環器内科/勤務医(民間病院))
・4月から赴任したため、ボーナスはありません。(60代/一般外科/勤務医(私立の大学病院))
・総額で高くなるなら、ボーナスはあってもなくてもどちらでも良い。(50代/消化器外科/勤務医(民間病院))
そのため、もし転職を検討する際には、ボーナス支給の有無だけで入職可否を決めてしまうのは得策とはいえません。
年俸制で雇用条件を示された場合には、念のためボーナスの支給実績も確認しておくと、入職後のトラブルを回避できます。
もし「入職前にお金に関する問い合わせをするのは心理的なハードルが高い」と感じる場合には、転職コンサルタントを介して確認するのも1つの方法です。
【2024年夏】勤務先別にみる、勤務医のボーナス支給率と支給額
次に、勤務先ごとのボーナス支給状況や支給額を確認していきます。
ボーナス支給率が最も高いのは「国公立病院」
ボーナスの支給がある医師の割合が一番高かったのは、「国公立病院」の勤務医です(89.2%)。
次いで「大学病院」(57.5%)、「民間病院」(35.3%)が続いています。
Q:今年の夏のボーナス支給状況を教えてください。
※老健や健診施設の勤務医、産業医、研究員、開業医、フリーランス等を除く回答
「大学病院」の勤務医の8割は「ボーナスが100万円以下」
次に、ボーナスを150万円以上支給された医師の割合に着目して比較したところ、その割合が最も高くなったのは、診療所の勤務医(55.6%)でした。
Q:支給額はどのくらいでしたか?
※老健や健診施設の勤務医、産業医、研究員、開業医、フリーランス等を除く回答
※「まだ支給額がわからない」を除く回答
一方で、ボーナス支給額が100万円未満の割合が最も高かったのは、大学病院の勤務医(80.0%)です。
大学病院の勤務医は、ボーナス支給率は高い一方で、支給される額は多くない傾向があるようです。
\常勤先が多忙でも、副収入を確保しやすい/
【2024年夏】年代別にみる、医師のボーナス事情
一般企業では、年代が上がり勤続年数が長くなったり、役職が上がったりすることによってボーナス支給額が高くなる傾向がありますが、医師の場合も同様なのでしょうか。
続いて、年代ごとのボーナス支給額を確認していきます。
年代が上がるほど、ボーナス支給額も上がる傾向がある
医師の場合も、年代が高くなるにつれてボーナス支給額が高くなる傾向がみられます。
今回の調査でも、支給額が100万円を超える医師の割合が最も高いのは60代以上であり、最も低いのは20代・30代と年代と支給額が比例した結果となっています。
Q:支給額はどのくらいでしたか?
※老健や健診施設の勤務医、産業医、研究員、開業医、フリーランス等を除く回答
※「まだ支給額がわからない」を除く回答
このように年代によってボーナス支給額に差異が出る理由として、以下の2つが考えられます。
理由①年代が上がると、基本給与額が上がる
年代が上がると給与額が増え、その分ボーナスの支給額も増えるというケースがあります。
多くの医療機関では、20代後半や30代前半の医師の給与額が低く抑えられている傾向があります。
ただし、専門医資格等を取得し、医師として独り立ちしていく30代半ばから40代になると給与額は大きく上がり、年収が1,800万円を超えるケースも増えてきます。
40代にさしかかると、診療科長などの役職にも就き始める医師が多くなり、さらに50代になると組織の指導的立場となり、副院長など病院内の重要ポストに就く人も出てきます。
このような変化に伴って基本給やボーナス支給額も増えるため、年代が上がれば上がるほど経済的なゆとりを感じやすくなるケースが多くなります。
理由②勤続年数が長くなる
さらに、一つの勤務先における勤続年数の長さも、ボーナス支給額に影響する要素の一つです。
医局に所属している若手医師の場合、医局人事によって短い期間内で頻回に勤務先が変わることが多くあります。
そのため一つの勤務先における勤続期間がボーナスの支給条件に満たなかったり、ボーナス支給額が低くなったりといったケースが発生します。
ただし、30代に入ると医局人事の影響が減り一つの勤務先にじっくり腰を据えて働きやすくなります。
よって勤続年数が長くなり、ボーナス支給額も増額となる場合が多くなります。
ボーナスがない医師・ボーナスが少ない医師が、年収を上げる方法3選
最後に、ボーナスがない医師やボーナス支給額が少ない医師が年収を上げるための方法を3つご紹介します。
勤務先に給与額の交渉をする
1つ目は、勤務先に基本給与額の増額を直接交渉するという方法です。
今回の調査では、約15%の医師が勤務先への給与交渉を経験したことがあると回答しています。
Q:現在のご勤務先に対して、ご自身で給与に関する交渉をしたことはありますか?
交渉をするタイミングとしては、入職前や異動、年度替わり等の節目で交渉を行ったという声が複数寄せられています。
▼医師からのコメント
・入職時、業務内容を加味して増額してもらった。(50代/循環器内科/勤務医(診療所・クリニック))
・異動時に交渉した。(50代/整形外科/勤務医(民間病院))
・年度替わりのタイミングで。(70代以上/腎臓内科/勤務医(民間病院))
直接の給与交渉が成功した医師は、全体の3割弱
なお「交渉に成功し、希望の年収が得られた」医師は、27.5%となっています。
一方で「同意が得られず、年収は増えなかった」または「希望額には届かなかったが、以前よりも年収が増えた」医師はそれぞれ36.2%を占めており、入職後に給与交渉することの難しさを示唆する結果となっています。
Q: 上記の交渉で、希望の年収を実現できましたか?
▼医師からのコメント
・コロナ禍に入り様子をみたが、まったく昇給される気配がないため、院長に掛け合って昇給を依頼し、交渉に成功。受け身でいるだけでは、何もプラス評価はされないことを思い知った。(40代/泌尿器科/勤務医(民間病院))
・管理職手当を不払いされそうになり院長に言ったが、事務長が「経費削減のため」と言われたようで、こちらの希望は撤回されてしまった。(60代/その他/勤務医(国公立病院))
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転職をする
2つ目の方法は、今より給与額が多い医療機関への転職です。
基本給与額だけで検討するのではなく、ボーナスの有無や支給条件、担当患者数や資格などに応じたインセンティブの有無も確認して検討すると良いでしょう。
なお、一般に公開されている情報は限定的な内容となっている場合も多いため、医療機関の内部事情や医師転職市場に詳しい転職エージェントを活用して情報を入手するのがオススメです。
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アルバイトをする
3つ目は、アルバイトで副収入を増やすという方法です。
2024年4月から始まった医師の働き方改革では、医師に対する時間外労働の上限規制の適用も開始されています。
この規制では外勤先における勤務時間も労働時間としてカウントされてしまうため、常勤先における労働時間が長い場合にはアルバイト可能な時間が限定的になってしまったり、アルバイト自体できない状態になってしまったりすることが考えられます。
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このような場合でも、働きやすいアルバイトとして希望する医師が急増しているのが、「宿日直許可」のある当直バイトや、限られた時間で効率的に収入を得られる高額アルバイトです。
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◆調査概要「2024年夏のボーナスと年収の見通しに関するアンケート」
調査日:2024年7月9日~7月16日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:441