フリーランス医師は、大学医局や特定の医療機関に所属せず、非常勤勤務のみで生計を立てる医師のことです。2024年4月から始まった「医師の働き方改革」により、フリーランス医師への転向を検討する医師も増えているようです。実際は全体の15.7%がフリーランスで、勤務日数や時間が自由でプライベートとの両立がしやすい一方、収入が不安定で社会保険料の負担が大きいです。診療科としては、内科、麻酔科、産婦人科がフリーランス医師に人気となっています。
本記事では、「Dr.アルなび」の会員医師へのアンケート結果をご紹介しながら、フリーランス医師の働き方の特徴やフリーランスとして働くメリットや注意点等を分かりやすく解説します。
目次
非常勤のみで活躍する、フリーランス医師とは
フリーランス医師とは、大学医局や特定の医療機関に所属したり開業したりすることなく、非常勤勤務のみで生計を立てている医師のことをさします。
フリーランスとして働いている医師は、全体の15.7%
Dr.アルなびが会員医師に行ったアンケートで医師478名に現在の収入減を尋ねたところ、「非常勤先からの収入のみ(フリーランス)」が12.6%、「非常勤先からの給与(フリーランス)+医業以外の副業」が3.1%でした。
つまり、合わせて全体の15.7%の医師がフリーランスとして働く医師ということになります。
Q:現在の収入源の組み合わせで、当てはまるものを教えてください。
なお医業以外の副業の内容を尋ねた質問では、不動産投資やFX投資、マンション賃貸、医療コンサルティングといった回答が寄せられました。
フリーランス医師の働き方の特徴とは
フリーランス医師は、勤務日数や時間の自由度が高い働き方が可能
フリーランス医師は、「雇用形態」が常勤医と大きく異なります。
常勤医師は、特定の医療機関と雇用契約を結び、正職員として働く医師のことをいいます。
医療機関ごとに定められた曜日・時間で勤務し、夜間の当直やオンコールにも対応するケースが大半で、時間外勤務や休日勤務が発生しやすい労働環境といえます。
一方フリーランス医師は、1つまたは複数の医療機関と非常勤勤務の雇用契約を結んで働く医師のことをいいます。
勤務日数や時間は自身で決めるため、比較的自由度の高い働き方を実現しやすいことが大きな特徴です。
また常勤医師と比べて時間外勤務が発生する頻度は低く、オンコール対応は基本的にはありません。
よって仕事とプライベートのオンオフをつけやすく、メリハリをつけた働き方が実現しやすい環境といえるでしょう。
フリーランス医師の3つの働き方
なおフリーランス医師の働き方には、主に以下のような形態があります。
フリーランス医師の働き方①定期非常勤
「週3日」や「月2回」など、条件を事前に決めて定期的に勤務する働き方を定期非常勤といいます。
具体的には、以下のような働き方があります。
・1つの医療機関で複数日働く(例:毎週月曜・水曜・金曜に勤務)
・複数の医療機関での定期非常勤を掛け持ちする(例:月曜はA病院で勤務、水曜と金曜はB病院で勤務)
勤務スケジュールが決まっていること、加えて半年から年単位での契約となるケースが多いことから、比較的安定的な収入を確保しやすい点がメリットとなっています。
フリーランス医師の働き方②スポット非常勤
「●月●日の9時から12時」など、特定の日時で単発契約を結んで勤務する働き方をスポット非常勤といいます。
常勤医師が病気や学会参加、休暇などで不在になるタイミングで募集が出されるケースが大半です。
そのため即戦力となる経験やスキルを有する医師が求められる傾向があり、時給も比較的高めで設定されていることが特徴です。
フリーランス医師の働き方③定期非常勤とスポット非常勤の組み合わせ
定期非常勤として決まった曜日や時間帯の勤務をしながら、空いた時間でスポット非常勤の勤務を入れるという医師も多くいます。
定期非常勤で安定的な収入を得ながら、状況に応じて高時給のスポット非常勤で働くことで、より効率的にまとまった金額を稼ぐことが可能になります。
フリーランス医師として働くメリットとは
続いて、実際にフリーランスとして働く医師から寄せられたコメントもご紹介しながら、フリーランス医師のメリットを整理します。
医師がフリーランスで働くメリット①勤務日数や時間を自由に決められる
フリーランス医師として働く最も大きなメリットは、自身のスケジュールや都合に合わせて働く日数や時間帯を決められることです。
「特定の曜日だけ働く」「半日だけ勤務する」といった働き方が可能なので、趣味や健康維持等プライベートを重視・優先したいと考える医師にとって、メリットの多い働き方といえるでしょう。
▼医師のコメント
・体調をみながら働ける。(30代/産婦人科)
・自身で仕事とプライベートのバランスをとりやすい。(50代/消化器内科)
・自由時間が確保しやすく、長期休暇も取りやすい。(60代/脳神経外科)
特に女性医師の場合は、結婚や出産・育児といったライフイベントをきっかけに、働き方の変更を検討するケースが多くあります。
このように長時間の勤務が難しくなってしまう状況であっても、非常勤として働くことによって医師としてのキャリアを維持し続けることが可能になります。
▼医師のコメント
・子育てとの両立がしやすい。(40代/精神科)
・育児との両立のためフリーランスを選んでいます。家族の予定に合わせて勤務を調整しやすい点がメリットです。(40代/一般内科)
▼事例もチェック
また、時間外の呼び出し等がなくなったことで、ワークライフバランスを改善できたという声も複数寄せられています。
▼医師のコメント
・常勤よりも給与がよく、夜の呼び出しなどの業務もない。(40代/消化器内科)
・自分で予定を立てられるし、夜間の電話がなくなって熟睡できるようになった。(50代/一般内科)
フリーランス医師の42.7%は、収入より「仕事とプライベートの両立」を優先
なお、今後の収入に対する考えを尋ねた質問では、4割を超える医師が「収入よりも、仕事とプライベートの両立を優先したい」と回答しています。
Q:今後の収入に対するご自身の考え方について、最も近いものを1つ教えてください。
上記の結果からは、仕事とプライベートを両立するための手段として、柔軟な働き方が実現しやすい「フリーランス」という形態を選択して働く医師が多いと推察されます。
医師がフリーランスで働くメリット②人間関係のストレスを軽減できる
特定の医療機関に所属しないフリーランス医師は、常勤医師と比べて人間関係のトラブルに悩まされる機会が少なくなる可能性もあるようです。
フリーランス医師であっても、診療や業務を円滑に進めるためのコミュニケーションは必要です。
しかし常勤として働く場合と比較すると、一般的にはビジネスライクな関係を築くケースが多いのではないでしょうか。
その分、精神的な負担は軽くなるといえるでしょう。
▼医師のコメント
・勤務先の人間関係に縛られることがない。(60代/一般内科)
・仕事でのトラブルや人間関係などの悩みなどを、一切引きずることがない。(60代/婦人科)
・上下関係や同期との競争など、面倒な人間関係がない。(40代/健診・ドック)
その他、フリーランス医師のメリットとして以下のようなコメントも寄せられています。
▼医師のコメント
・環境が変えられるので、仕事のストレスが減る。(50代/形成外科)
・場所によって仕事の内容が全く違うので、新鮮で楽しい。(50代/整形外科)
・専門以外の科の知識を得られる、絶好の機会です。(60代/脳神経外科)
・旅を兼ねて、未知の地を訪れる喜びがある。(60代 /婦人科)
フリーランス医師として働く際の注意点
一方で、フリーランスとして働く上で気をつけておきたい点もご紹介します。
医師がフリーランスで働く際の注意点①雇用や収入が不安定
フリーランスで働く場合、常に仕事を確保できる保証がないため、収入はどうしても不安定になりやすい傾向があります。
安定した収入を得やすいとされる定期非常勤で働く場合も、勤務先の医療機関の都合などで勤務が終了になってしまう可能性もゼロとは言い切れません。
さらにスポット非常勤の場合は希望する医師が多く求人の競争率が高いため、働きたい日に働けないというケースもあるでしょう。
また常勤医師の場合は、祝日などで仕事が休みとなる日があっても支給される給与の額は基本的には変わりません。
一方のフリーランス医師は勤務が休みとなった分だけ給与額が減ってしまうので、その点も考慮したうえで勤務予定などを計画する必要があるでしょう。
▼フリーランスの年収事情はこちらでチェック
医師フリーランスで働く際の注意点②社会保険料の負担が大きくなる
フリーランス医師として働く場合、常勤として働く場合よりも支払う社会保険料が高額になることも知っておきたいポイントです。
▼医師のコメント
・デメリットは、やりがいと社会保障。(30代/整形外科)
常勤医師は勤務先の社会保険に加入しますが、フリーランス医師は自身で国民健康保険に加入するか、前職の社会保険を任意継続するのが一般的です。
また常勤医師は勤務先の医療機関と半額ずつ折半して保険料を負担していますが、多くのフリーランス医師が加入する国民健康保険では保険料はすべて自己負担となります。
前職の社会保険を任意継続する場合も、勤務先の負担分がなくなり全額自己負担になります。
同様に年金についても、常勤医師が加入する厚生年金は労使折半で、配偶者が無職なら第3号被保険者として年金保険料負担はありません。
一方のフリーランス医師が加入する国民年金では、配偶者の分も含めて全額自己負担になります。
ただし、一定の条件を満たす場合にはフリーランス医師でも勤務先の社会保険に加入できるケースがあります。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
フリーランスとして医師が活躍しやすい!診療科目・3選
最後に、フリーランスとして活躍しやすい診療科をご紹介します。
多くのフリーランス医師が活躍している診療科目は、主に以下の3つです。
フリーランス医師が活躍しやすい科①非常勤募集の求人数が多い「内科」
フリーランス医師として働いている方が多く、求人も豊富にある内科は、フリーランス医師が働きやすい科目の代表格です。
なかでも外来診療や当直の業務は、常勤医師の負担軽減という観点からもフリーランス医師への需要が高く、常に多くの募集が出ています。
フリーランス医師が活躍しやすい科②1回完結型の業務で働きやすい「麻酔科」
同じく、医療機関からの需要が高い診療科としてよく挙げられるのが麻酔科です。
慢性的な人材不足であることや、単発の勤務であっても仕事ができる1回完結型の業務内容であることなどから、多くの医療現場が麻酔科のフリーランス医師を必要としています。
しかし麻酔科のフリーランス医師として働く場合は、新専門医制度における麻酔科専門医の更新条件を確認しておきましょう。
現時点の条件では、麻酔科専門医の維持のためには「週3回以上同じ施設で勤務する」ことが義務付けられています。
よって麻酔科専門医が専門医資格を維持しながらフリーランスという働き方を選択する際には、定期非常勤などで週3回以上働ける医療機関を探す必要があります。
フリーランス医師が活躍しやすい科③慢性的に医師が不足している「産婦人科」
麻酔科と同じく、人材不足が深刻と言われる産婦人科のフリーランス医師の需要も高くなっています。
産婦人科はその特性から、24時間必ず誰かが勤務しなければなりません。
よって常勤医師だけでは手が回らない夜間や、早朝の時間に働けるようなフリーランス医師が活躍しやすい領域といえるでしょう。
以上、フリーランス医師の働き方の特徴やフリーランスとして働くメリットや注意点等をご紹介しました。
現在ご自身が現在おかれている状況やこれから実現したいキャリア・働き方を考えた際に、最適な選択肢として「フリーランス」という働き方を選ぶ医師が増えています。
フリーランスという働き方を検討されている先生は、多くの先生方の事例をみてきた「Dr.アルなび」のコンサルタントにぜひご相談ください。
フリーランス医師向けの求人のご紹介はもちろん、メリットやデメリットの整理、フリーランスという働き方以外の課題解決策も含めて、さまざまな情報・サポートをご提供します。
◆調査概要「医師の年収に関するアンケート」
調査日:2023年11月7日~11月14日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
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