「医師の働き方改革」適用開始のおよそ1年前となる2023年4月下旬、「Dr.アルなび」では会員医師365名に「医師の働き方改革」に関するアンケートを実施しました。
2024年4月からの「医師の働き方改革」で時間外労働に上限が設けられ、医師のアルバイト時間が減少すると予測されています。約4割の医師がアルバイト減少を予測し、収入に影響を懸念する医師も多いです。特に非常勤収入が減ると見込まれ、約49%が収入減少を懸念。対策として、宿日直許可を得たアルバイトを探す医師が多い一方、投資など医業以外の収入確保も増えています。
本記事ではアンケート結果の中から、「医師の働き方改革」による医師の外勤・アルバイト勤務や収入への影響、そして2024年4月以降に推測される変化に備えるための対策についてレポートします。
「医師の働き方改革」で、医師のアルバイトはどう変わる?
37.3%の医師は、2024年4月以降「アルバイトの時間や回数が減る」
2024年4月からの「医師の働き方改革」の大きな目玉となるのが、罰則付きの時間外労働の上限規制です。
この上限規制によって、すべての勤務医の時間外労働は原則「年間960時間以下/月100時間未満」と定められます。
そのため多くの勤務医は、これまでのように自由にアルバイトができなくなると予測されています。
今回の調査でも、2024年4月以降はアルバイトの回数や時間が「減少する」と回答した医師はおよそ4割弱を占めました(「大幅に減少する」「減少する」の回答数を合算)。
Q:2024年4月の「医師の働き方改革」施行後、非常勤勤務の回数や時間にはどのような変化があると思いますか?
48.8%の医師は、「医師の働き方改革」で年収が減ると懸念
続いて、「医師の働き方改革」による収入への影響について尋ねました。
Q:2024年4月の「医師の働き方改革」施行後、年収(常勤、非常勤の収入合計)にはどのような変化があると思いますか?
全体の約半数を占める「あまり変わらない」(50.1%)が最多となり、次いで「減少する」(38.9%)、「大幅に減少する」(9.9%)が続きます。
◆収入への影響は少ない
・自分の場合は、もともと超過勤務があまり無いので、関係ないと思っている。(50代/呼吸器内科/勤務医(診療所・クリニック))
・常勤医は、あまり影響が無いと思っている。(40代/精神科/勤務医(大学病院以外の病院))
・多少減収になると思うが、税率を考えると影響は少ないか?(60代/消化器内科/勤務医(診療所・クリニック))
収入が「増加する」と回答した医師は1.1%とごく少数でしたが、収入が「減少する」と回答した医師は 48.8%となり、こちらも半数近くを占めています(「減少する」と「大幅に減少する」の回答数を合算)。
◆これから収入が減る見込み
・多くの勤務医の年収は下がると思う。(50代/循環器内科/開業医)
・おそらく、再来年破産する。(60代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆すでに収入が減った
・まだ施行前だが アルバイトを減らされ、収入が半減した。(60代/一般外科/勤務医(診療所・クリニック))
常勤先となる医療機関の状況や業務量、非常勤先の状況などによって、「収入に影響がある医師」と「そうでない医師」にほぼ二分されているという状況が伺われます。
また、労働時間に一律で上限規制を設けることに対して違和感を覚える等のご意見も寄せられています。
◆個人の意思に任せるべき
・働き方は、本人の自由でいいのではないかと考える。(50代/整形外科/開業医)
・働きたい人は働けばいいと思う。(50代/精神科/勤務医(大学病院以外の病院))
◆医療者の収入を確保する等の対策を施すべき
・時間を減らすのではなく給料をあげるか、スタッフを増やすべき。
大学病院に対して資金投入が少なすぎる。(30代/放射線科/勤務医(大学病院))
・産業医としては良いことと思う反面で、医療者の生活費の確保はどうなるのか。
また、結果として医療縮小に向けようとしている国の思惑も感じられ、どうなるのか不安は感じています。(40代/心療内科/産業医)
・「笛吹けど踊らず」的なのが現実で、医療費を確保して医療者の収入を確保しない限り、絵に描いた餅でしょう。(60代/一般外科/勤務医(大学病院以外の病院))
・政府が「医師は一般人なら過労死レベルの勤務を是とする」一方で、このように上限設定を一方的に行い、個人の収入に制限を課すことには不条理さと怒りを覚える。(40代/泌尿器科/勤務医(大学病院以外の病院))
76.4%の医師は、「非常勤先からの収入減」で年収が減る
さらに上記の質問で収入が「大幅に減少する」「減少する」と回答した医師に、その理由を尋ねました。
(年収が大幅に減少する・減少すると回答した方へ)
Q:「年収が減少する」と思う理由として、最も当てはまるものを教えて下さい。
最も多かったのは「非常勤での収入が減少するため」(54.5%)で、次いで「常勤先の収入が減少するため」(23.6%)、「常勤・非常勤両方の収入が減少するため」(21.9%)となりました。
2024年4月から適用される上限規制に向けて、常勤先における労働時間や当直回数が調整されるなどした結果、残業代や当直手当が減少する医師も少なくないでしょう。
また上記の規制では、非常勤先における医師の労働時間も対象となります。
そのためアルバイトに関する制限やルールの整備を進める医療機関が増えており、2024年4月以降は「医師がアルバイトしづらい状況になる」と推測されています。
実際に今回の調査においても、「医師の働き方改革」が進んでいる医療機関で働く医師の30.6%が「アルバイトへの制限が大きくなった」と回答しています。
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「医師の働き方改革」以降も年収を維持するための対策は?
それでは、今後収入が減ってしまうことを懸念する医師は、どのような対策を講じているのでしょうか。
36.2%の医師が「宿日直許可のあるアルバイトを探す」と回答
Q:2024年4月の「医師の働き方改革」施行後も年収を維持するために、検討していることはありますか?(複数回答可)
最も多かったのは「投資など、医業以外での収入を確保する」(回答数:154)でした。
以前の調査結果(※1)においても全体の65.4%の医師が「現在投資をしている」と回答しており、将来への備えとして投資を行う医師も多いことが伺われます。
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次いで多かったのは、「宿日直許可のあるアルバイトを探す」(回答数:132)です。
宿日直許可を取得しているアルバイトは、すべての勤務医に原則適用される「時間外労働は年間960時間以下/月100時間未満」という上限規制の適用外となります。
つまり宿日直許可を取得しているアルバイトは、医師の労働時間としてカウントされないということです。
そのため2024年4月以降もアルバイトを希望する医師は、宿日直許可のあるアルバイト募集の中から希望に合うものを探すというケースが多くなるでしょう。
以下のコメントのように、現在のアルバイト先に宿日直許可の取得状況を確認や相談を進めている医師も増えているようです。
・現在の当直病院が宿日直許可をとるようなので、収入に大きな変化はないのではと思っています。(50代/脳神経内科/勤務医(大学病院以外の病院))
・非常勤先に宿日直許可を届け出してもらうことで(勤務内容は事実上変わらないが)、できるだけ労働時間カウント不要としてもらう方針である。(50代/一般内科/勤務医(大学病院以外の病院))
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宿日直許可のあるアルバイトの探し方は?
「医師の働き方改革」の施行が約1年後に迫る今、医師のアルバイト探しで大きなポイントとなるのは、医療機関における宿日直許可の取得状況です。
しかし一般的な求人票などでは、宿日直許可の取得状況は公開されていません。
それでは宿日直許可のあるアルバイト募集を探すためには、どのような方法があるのでしょうか。
宿日直許可のあるアルバイトを探すなら、「Dr.アルなび」がオススメ
求人倍率の激化が予想される2024年4月以降もアルバイトを希望する場合は、非公開情報を効率的に入手できる環境を早めに整えておくのがオススメです。
「Dr.アルなび」は、専任スタッフを全国に配置。
医療機関と頻回なコミュニケーションを取りながら、「宿日直許可」の取得状況などの内部情報を積極的に入手し、会員の先生限定でご案内しています。
2024年4月から始まる「医師の働き方改革」以降のアルバイトや働き方についてご不安やご心配な点は、「Dr.アルなび」のコンサルタントまでぜひお気軽にご相談ください。
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調査概要
「医師の働き方改革」に関するアンケート
調査日:2023年4月25日~2023年5月2日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:365
(※1)「医師の資産形成・運用についてのアンケート」
調査日:2022年12月20日~12月27日
対象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:webアンケート
有効回答数:387