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【社労士に聞く】非常勤医師でも入れる!社会保険の加入条件と注意点とは?

【社労士に聞く】非常勤医師でも入れる!社会保険の加入条件と注意点とは?

医師が社会保険に加入するためには、勤務先が「適用事業所」である必要があります。適用事業所は法人事業所や、従業員5人以上の医療機関です。非常勤医師の場合、勤務時間が常勤の4分の3以上、または特定の条件(例:週20時間以上、月額8.8万円以上)を満たす必要があります。社会保険加入の相談は、入職前に確認し、条件を満たす働き方を計画することが重要です。

本記事では、非常勤医師が社会保険に加入するための具体的な条件や、加入を検討する際に気を付けたいポイントについて、社会保険労務士の舘野聡子先生にお話を伺いました。

社会保険に加入したいとお考えの非常勤医師の方は、ぜひ参考になさってください。

舘野 聡子(たての さとこ)
株式会社イソシア 代表取締役
同志社大学 法学部 法律学科 卒業。
特定社会保険労務士/医療労務コンサルタント/シニア産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント/公認心理師などの資格を多数保有。
民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後2015年に社労士として独立開業し、現在に至る。
社労士としての法律知識と具体的な手続きを踏まえた上で、産業保健全般やメンタルヘルス対応・対策、ハラスメント対応・対策づくり等を担当している。

医師が社会保険に加入できるのは、どのような医療機関?

編集部:実際にDr.アルなびでも、先生方から「この働き方の場合、社会保険に加入できますか?」というご相談をお寄せいただくことがあります。
非常勤として働く先生が勤務先の社会保険に加入するためには、どのような点を確認すれば良いでしょうか。

その医療機関が「適用事業所」かどうかを確認しよう

舘野:まずは、勤務先の病院やクリニックが社会保険に入らなければいけない事業所なのか、もしくは そうではない事業所なのかという点を確認しましょう。

社会保険に入らなければいけないと法で定められている事業所のことを適用事業所といいますが、医師が社会保険に加入するためにはその医療機関が適用事業所であることが大前提となります。

もしも適用事業所でない場合は、医師がいくら希望したとしても社会保険に加入することはできません。

病院やクリニックが適用事業所となる2つの要件

編集部:その医療機関が適用事業所であることが、社会保険に加入するための第一条件となるのですね。
具体的には、どのような要件を満たす医療機関が、適用事業所となるのですか?

舘野:適用事業所となる条件には、大きく分けて2つあります。

1つ目は、すべての法人事業所です。医療機関の場合でいうと、「医療法人」ですね。
医療法人の場合は、事業主や従業員の意思に関係なく、加入の条件を満たす従業員は強制的に社会保険に加入しなければなりません。
従業員はもちろん、役員しかいない場合も、強制的に加入対象となります。

2つ目は、従業員を常時5人以上雇用している場合です。
個人経営の病院やクリニックでも、常時雇用している従業員が5人以上いる場合は社会保険へ加入させる義務が発生します。

非常勤・パートで働く医師が、社会保険に加入するための条件とは?

非常勤・パートで働く医師が、社会保険に加入するための条件とは?

編集部:適用事業所に入職した場合も、常勤医師と非常勤医師では社会保険の加入条件が異なるのですよね?

適用範囲の拡大で、パートやアルバイトの社会保険加入の義務化が進んでいる

舘野:そうですね。

常勤医師の場合は、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の方は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず強制的に加入となります。
一方非常勤の場合は、一定の条件を満たすことで加入対象となります。

なお2022年10月の法改正で、一部のアルバイトやパートに対しての社会保険の加入が義務化されました。

具体的には、以前まで従業員数501人以上の企業が対象だったところが、2022年10月以降は101人以上の企業までに拡大しています。
さらに2024年10月以降は、従業員数51人以上の企業にまでその対象が拡大される予定です。

編集部:どんどん対象となる範囲が拡大しているのですね。
このような事業所に勤務するアルバイトやパートの方はすべて、社会保険に加入できるのでしょうか?

非常勤医師が社会保険加入するための条件とは?

舘野:いいえ。
社会保険に加入するためには、対象となる医療機関に勤務することに加えて、以下のいずれかに該当する必要があります。

非常勤医師の社会保険加入条件①勤務時間や日数が、常勤の4分の3以上

1週の所定労働時間 および 1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上である労働者については、社会保険の加入義務が生じます。

いわゆる、「社会保険の4分の3ルール」と呼ばれるものです。

非常勤医師の社会保険加入条件②5つの条件すべてを満たす場合

もし上述の「社会保険の4分の3ルール」を満たさない場合であっても、以下5つの条件のすべてを満たす場合には、社会保険の加入対象となります。

・厚生年金の被保険者数が101人以上の企業であること
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・月額賃金が8.8万円以上
・2ヶ月を超えて雇用の見込みがあること
・学生ではない

編集部:同一の医療機関で複数日働く非常勤医師の場合は、上記①②のいずれかに該当すれば、社会保険に加入できるということですね。

非常勤医師が社会保険の加入について相談する際の注意点

非常勤医師が社会保険の加入について相談する際の注意点

編集部:最後に、社会保険の加入について医療機関へ相談する際に気を付けておきたいポイント等があれば、お聞かせいただけますでしょうか。

なかには、「社会保険に関する相談をしたら、医療機関にどのように受け取られるだろう…」と気後れしてしまったり、遠慮してしまったりする方もいらっしゃるのでは…と思います。

舘野:そうですよね。

社会保険は収入がいくらかによって納める金額が決まる報酬比例の保険料ですが、その保険料は事業者と被保険者が折半します。

医師は収入が高いので、勤務先が保険料を半分負担してくれることは大きな魅力ですが、一方の医療機関側としては社会保険料の負担が増えてしまう。

このような事情から、非常勤医師が社会保険の加入を希望したら、医療機関から難色を示されてしまうのではないか?ということですよね。

医療機関への確認や交渉に気後れしてしまうときは、エージェントに依頼を

舘野:基本的に医療機関は「社会保険加入の要件をクリアしているかどうか」で判断するはずなので、一方的に断られたりすることはないかと思います。

しかし、中には「パートの先生は、社会保険に入れない」と、社会保険の加入条件を誤解している医療機関もあるかもしれませんね。

編集部:このような場合は、上手に医療機関の誤解を解きながら、きちんと相談に乗ってもらえる流れにできると良いですよね。

もしご自身で直接医療機関に伝えることが難しいと感じる場合には、「Dr.アルなび」などのエージェントに確認や交渉の代行してもらうという方法がオススメです。

自分の働き方、社会保険に入れる?

舘野:上述でご紹介したように社会保険の適用範囲は今後も拡大する予定なので、非常勤医師でも社会保険に加入可能な勤務先はますます増えていくでしょう。

このような動向も追いかけながら、「社会保険に加入できるかもしれない」と思う働き方を検討されている先生は、一度医療機関に相談されてみると良いと思います。

医療機関へ社会保険加入に関する相談をするなら、入職する前に

編集部:医療機関へ 社会保険に関する問い合わせや相談をする場合は、どのようなタイミングが良いでしょう?

舘野:医療機関への問い合わせや相談は、ぜひ入職前に行っておきたいですね。

というのは、「社会保険の4分の3ルール」は実際に「〇時間働いた」という勤務実績ではなく、入職時に「〇時間働く」という契約を結んだかという労働契約上の所定労働時間によって判断されるからです。

入職後に「自身の働き方が、加入条件を満たしていなかった」と後悔しないためにも、社会保険に加入できるのはどれくらい勤務する場合なのかという情報を、早い段階でキャッチしておきましょう。

編集部:なるほど、きちんと社会保険の加入条件をクリアできるラインを確認したうえで、常勤の4分の3を超える働き方を検討すれば安心ということですね。

本日は、非常勤として働く場合の社会保険の加入条件や、注意すべきポイントが良く分かりました。
貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

舘野 聡子(たての さとこ)

専門家

舘野 聡子(たての さとこ)

株式会社イソシア 代表取締役
同志社大学 法学部 法律学科 卒業
特定社会保険労務士/医療労務コンサルタント/シニア産業カウンセラー/国家資格キャリアコンサルタント/公認心理師などの資格を多数保有。
民間企業に勤務後、社労士事務所に勤務。その後2015年に社労士として独立開業し、現在に至る。
社労士としての法律知識と具体的な手続きを踏まえた上で、産業保健全般やメンタルヘルス対応・対策、ハラスメント対応・対策づくり等を担当している。

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