医学的な知識を活かして、企業で働く労働者の健康や労働環境の改善などをサポートする産業医。嘱託産業医は、非常勤として企業を訪問し、月1~2回の短時間勤務が一般的です。臨床医や多忙な医師でも柔軟に働くことができ、産業医としての業務を通じて労働者の健康管理に貢献できます。必要な資格には医師免許や、産業医学研修修了などがあります。給与は1回約51,143円、時給では15,000円~30,000円程度です。
本記事では「嘱託産業医」になるために必要な資格やスキル、働く上でのメリット、そして勤務で得られる給与の相場などについてお伝えします。
嘱託産業医の働き方とは?
嘱託産業医は、決められた日時だけ訪問して業務を行う
産業医には、大きく分けて2つの働き方があります。
1つめは、臨床医でいう常勤医師のように1つの事業場に常駐して産業医業務に従事する「専属産業医」です。
そして2つめが、決められた日時のみ事業場を訪問して産業医業務を行う「嘱託産業医」です。
嘱託産業医は、企業の非常勤職員として直接雇用契約を結ぶ、またはエージェントなどを介して業務委託契約を締結したうえで勤務をします。
多くの場合 訪問は月1回~2回程度で、衛生委員会が開催されるタイミングに合わせて事業所を訪れることもあります。
日本で活動する産業医はこの嘱託産業医として働いていることが大半で、勤務医や開業医が 臨床の診療業務と兼務しているケースも少なくありません。
月1回や短時間勤務の案件も多数!
嘱託産業医として働くメリットは?
嘱託産業医として働くメリット
フレキシブルで、多忙な医師でも勤務しやすい
嘱託産業医として働くメリットとしてまず挙げられるのは、忙しい臨床医でも働きやすいことです。
嘱託産業医の募集では、勤務回数は月1回程度、1~2時間と短時間の訪問で業務を行う案件も少なくありません。
よって臨床の業務や育児、介護などで多忙な医師でも、ライフスタイルに合わせて働くことが可能です。
知識や経験の幅を広げることができる
臨床で医師に求められるのは病気やケガの患者様の症状を改善することですが、産業医に求められるのは労働者の健康や労働環境の改善です。
医師としての知識や視点を活かしながら企業内の様々な人と接点を持ち、働く人々の心身の健康をサポートする業務で社会への貢献を実感できるでしょう。
どのような資格が必要?嘱託産業医になるための要件
労働安全衛生法 第13条第2項では、産業医の要件について以下のような記載があります。
産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
引用)厚生労働省「産業医の関係法令」
具体的にどのような要件をクリアする必要があるか、詳しくご紹介していきます。
産業医になるための前提は、医師であること
労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識を有している必要があることから、医師免許を取得した医師であることが前提となっています。
医師が産業医として活動するために求められる要件
加えて、厚生労働省令で定める以下①~⑤のいずれかの要件を満たすことが求められます。
①日本医師会の産業医基礎研修を修了すること
産業医の要件を満たすための方法として最も一般的なのは、日本医師会および都道府県医師会で実施している産業医学基礎研修を修了することです。
前期研修で14単位以上、実地研修で10単位以上、後期研修で26単位以上の合計50単位以上を修了した医師、またはそれと同等以上の研修を修了したと認められる医師は「日本医師会認定産業医」として認定されます。
参照)日本医師会 認定産業医
その他にも、以下のような要件を備えることでも産業医としての資格を得ることが可能です。
②産業医科大学の産業医学基礎講座を修了する
産業医科大学以外の大学医学部医学科を卒業した医師も、受講することが可能です。
本講座の全授業科目の履修認定を受けると「産業医学基本講座修了認定書(産業医科大学産業医学ディプロマ)」を取得でき、日本医師会認定産業医に申請できます。
参照)産業医科大学「産業医学基本講座」
③労働衛生コンサルタント試験に保健衛生区分で合格する
労働衛生コンサルタントは、医師免許保有者であれば受験資格が得られます。
試験は、一次の筆記試験と二次の口述試験で構成されています。
④産業医科大学で該当課程を修了、卒業し、大学が行う実習を履修している
⑤大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者である
参照)公益財団法人 産業医学振興財団「産業医になるには」
嘱託産業医の給与相場は?
最後に、気になる嘱託産業医の給与相場をご紹介します。
嘱託産業医の給与相場は、1回あたり51,143円程度
医師向けアルバイト情報サイト「Dr.アルなび」に掲載されている嘱託産業医の求人票をもとに平均額を算出したところ、嘱託産業医の平均給与は1回あたり約51,143円です(2023年5月現在)。
ただし上記を算出したデータには、1時間勤務や6時間勤務など、様々な勤務条件の募集が混在しています。
一つの参考値としてご覧いただき、具体的に案件を検討する際には改めて条件をご確認ください。
なお1時間当たりの時給で見てみると、15,000円~30,000円程度の案件が多くなっています。
以上、「嘱託産業医」になるために必要な資格やスキル、働く上でのメリット、そして勤務で得られる給与の相場などについてお伝えしました。
最近では企業内における感染症拡大防止策や在宅勤務によるメンタルヘルスケアなど、産業医のニーズはより高まっています。
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